
綺麗な富士山を眺めてみたい!

できればかなり近い距離で眺めたい!
こんな思いを持っている方は多いのではないでしょうか?
静岡県の東部に位置する富士市。
この街には、富士山を間近に見ることができるローカル電車、岳南電車があります。
小規模なローカル線ですが、全ての駅から富士山が見える鉄道として富士山と電車が写る姿を撮影したい鉄道ファンが詰めかけることで有名な鉄道です。
今回の記事では、そんな岳南電車の素晴らしさと、岳南電車全10駅の見所を一気に紹介していきましょう。
岳南電車に乗れば、美しい富士山を間近に見ながら満喫できるので、この機会にぜひ知ってみてください!
目次
岳南電車 基本情報
岳南電車は、静岡県富士市を走る
- 全長9.2km
- 起点から終点まで所要時間20分
- 全10駅
というかなり小規模なローカル私鉄電車です。
駅の造りもレトロ感満載で、電車も年季が入った車両ばかりですが、岳南電車は昔から地域産業を支えるために重要な鉄道会社でした。
開業した1949年から2013年までは、岳南鉄道という名前の鉄道で、沿線にある製紙工場などに物資運搬をする貨物列車と旅客電車を並行して運転する鉄道でした。
しかし、乗降客の減少やトラック輸送の発達により貨物の輸送量が年々減少していき、採算が取れず赤字になっていきます。
やがて2012年に岳南鉄道は貨物事業を廃止。
そこから岳南鉄道は電車部門が分割化を決意し、翌2013年に子会社の岳南電車に鉄道経営が移管されることになったのです。
その後も決して楽な状況ではありませんが、生き残りをかけて様々な工夫をして話題を提供している鉄道で、ローカル電車の鏡と言われています。
そんな僕が思う岳南電車の素晴らしいところは、
- 富士山をどこからでも眺めることができる
- イベント列車を運行
- オリジナルグッズの販売
以上の3つです。
こちらを順番に解説していきましょう。
岳南電車の特徴① 富士山がどの駅からでも見れる
冒頭でも言いましたが、
全ての駅から富士山が見える!
これが岳南電車の最大の強みです。
反対側にある山梨県の富士急行は、「富士山に1番近い鉄道」という強みをアピールしてますが、全ての駅から富士山が見えるわけではありません。
なので、これは全国にアピールできる岳南電車最大の強みと言えます。

えっ、本当に富士山が見えるの?
と疑問に思い、それぞれの駅から富士山の方向を眺めてみたら、本当に全ての駅が富士山の見える位置にあったのです。
写真は本吉原駅から見た富士山です。
残念ながら雲に隠れてしまっていますが、駅の入口からしっかりと富士山は見えます。
この日は山頂が雲に覆われてしまって、綺麗な富士山を見ることができず。
こればかりは運なので仕方がないですね。
岳南電車の全駅には、このような「富士山ビュースポット」というサインがあります。
これは、岳南電車の社員が独自に見つけた駅での撮影スポットを示すものです。
綺麗な富士山を撮影したいなら、この表記を見つけて撮影してみましょう。
岳南電車の特徴② 積極的なイベント開催
短い路線ながら、見所あふれる岳南電車。
富士市では富士山の雪解け水を利用した製紙産業が盛んで、市内のあちこちに製紙工場が点在しています。
無数の煙突から白い煙が吹き出される光景は、富士市の象徴とも言える光景です。
その工場は、夜になると青白い光でライトアップされます。
この光景があまりにも幻想的な景観の良さが認められて、日本夜景遺産にも選ばれました。
こちらのサイトに、その選定理由が載っています。
岳南電車も独自に、
- 夜景電車(夜景を眺めるイベント列車)
- 電車内でジャズライブを楽しめるジャズトレイン
- ビール電車
といった企画電車を独自に運転したり、静岡のローカルテレビとコラボしたりするなど、多彩なアイディアで話題を提供しています。
こちらのTwitterでは、「岳ちゃん」という公式アカウントで情報を提供していますので、ぜひ読んで見てください。
岳南電車の特徴③ オリジナルグッズの販売
岳南電車では、独自開発やコラボによるオリジナルグッズの販売にも力を入れています。
吉原駅の改札口前には、様々なオリジナルグッズが販売されていて、集客力向上を目指していました。
こちらはクリアファイル(300円)、白い袋の岳南電車ブランドと、夜景列車をイメージした黒い袋のブレンドコーヒー(150円)が販売されていました。
800円で岳南電車人形焼きもあって、中々充実した品揃えです。
こちらは、岳南電車の車両がプリントされたマフラータオルです。(1,000円)
2022年5月からは、シーラック株式会社で販売されているバリ勝男くんという静岡で有名なお土産とのコラボ商品も販売することになりました。
この他にもたくさんのお土産が販売してあるので、訪れた記念に購入していきましょう。
岳南電車 1日乗車券
1日岳南電車を満喫したいなら、こちらの全線1日フリー乗車券を購入するのが便利です。
価格は大人720円、子供310円となっていて、切符は昔懐かしい硬券スタイルでした。
こちらの硬券を購入したい場合は、必ず吉原駅の窓口で購入しましょう。
窓口の向かいの自販機で購入することもできますが、ペラペラの食券スタイルの切符が出てきます。
せっかく乗車するのだから、窓口で1日乗車券を必ず買うようにしましょう。
吉原駅と吉原中央駅以外は全て無人駅となっているので、降りる際は前方の扉から、運転手さんに乗車券を見せて降ります。

岳南電車では、ICカードは使用できません。
なので現金で乗車の際は整理券を取って、降りる際に運転手さんの持つ箱に運賃を入れるというシステムです。
ちなみに吉原駅から終点の岳南江尾駅までの運賃は370円。
起点から終点まで往復してしまえば、1日乗車券で簡単に元が取れます。
岳南鉄道 車両の紹介
続いては、訪問した日に走っていた、岳南電車で使用されている車両を紹介していきましょう。
こちらは、1996年に導入された7001系です。

あれ?どっかで見たことあるぞ!
そう思った人もいるのではないでしょうか?
実はこの車両、かつて京王井の頭線で主力として使用されていた旧3000系の1両を譲り受け、左右に運転台を取り付け改造した電車です。
1両編成で、左右に揺れながら走る姿はどこかユーモラスでした。
車内はこのように通勤用のロングシートです。
中刷り広告のところには、地元の小学生が描いた電車の絵が飾ってありました。
尚、岳南電車のホームは低めに造られているので、電車とホームの高さはかなりあります。
くれぐれも、足元に気を付けて乗降しましょう。
次に紹介するのは9000系です。
創業70年を記念して2018年に導入されたこの2両編成の新型車。
車内にはクロスシートが導入されていました。
この車両、どこから来たかお分かりでしょうか?
実はこの電車、山梨県の大月〜河口湖までを走る富士急行から譲り受けました。
元々は青色の車両でしたが、岳南電車に移籍することで車体がオレンジの岳南電車の色に塗り替えられたのです。
クロスシートに腰掛けて、車窓の富士山をゆっくり眺めるのもまた良いものですよね。
岳南電車はこの2つの他にも車両を所持していますが、それはまた後ほど紹介します。
岳南電車 主要駅の紹介
さてここからは、岳南電車にある全10駅を紹介していきます。
どの駅も、昭和時代にタイムスリップしたような懐かしい駅ばかりです。
電車の運転間隔は30分に1本の間隔なので、時刻表をしっかりと読んで計画を立てれば1日で全駅を見て回ることができます。
たった10駅ですが、見所はかなり豊富です。
それでは早速紹介しましょう!
岳南電車 吉原駅
最初に紹介するのは、起点の吉原駅です。
JR東海道線との乗り換え駅で、岳南電車の駅舎はJRの駅舎とは離れたところにあります。
東海道線ホームの富士方面には、このような岳南電車の乗り場に直接アクセス可能な跨線橋が設置されているので、こちらを利用した方が便利です。
もしJRの駅舎から改札を出てしまうと、北口出口からこちらの裏路地を通らなければならないので、かなり不便なことを覚えておきましょう。
こちらが岳南電車の吉原駅の駅舎。
路地裏を歩いてもそこまで遠くはないですが、雨の日などは跨線橋を利用した方が便利です。
岳南電車が現在の吉原駅に延伸したのは旅客運行を開始した1949年のこと。
1956年まで「鈴川駅」という駅でしたが、岳南電車の延伸によって名前が現在の吉原駅に改称され、それまであった吉原駅は、「本吉原駅」に名称が変更になりました。
岳南電車 ジャトコ前
吉原駅を発車した電車は、東海道線と分かれて右へカーブ。
そして工場の間を通って到着するのが、こちらのジャトコ前駅です。
この駅は、かつて駅前が日産の工場だったので、「日産前」という駅名でした。
工場ができたことで物資輸送のための線路を工場まで伸ばす必要になり、この線路が現在の吉原駅までの延伸されたことで、岳南電車は誕生したのです。
日産工場が、岳南電車の運命を大きく変えたのですね。
99年に日産グループのジャトコの工場となり、2005年に現在の駅名に変更。
小さな無人駅ですが、ホームには綺麗な花と花壇が整備されていました。
岳南電車 吉原本町駅
次の駅は、吉原本町駅です。
単線1本の小さな駅ですが、吉原駅と同様に有人駅で、降りる際は駅員さんに料金や切符を渡します。
駅前には、大規模な商店街が広がっています。
ここは吉原商店街と言って、富士市の繁華街として飲食店などが立ち並ぶ場所です。

JR富士駅周辺にも繁華街は一応ありますが、製紙工場が駅の目の前なので、規模ではこちらの方が上です。
とはいえほとんどの店はシャッターが閉まっていて、地元のFMラジオのBGMが虚しく響いていました。
こちらは、吉原中央駅です。
駅と呼ばれていますが、バスターミナルです。
昔は昭和臭あふれるバスターミナルでしたが、リニューアルされて綺麗になりました。
ここから、富士駅や富士宮駅、富士市役所にバスでアクセスできます。
そして吉原商店街には、長さん小路という小路があります。
長さんとは、ドリフターズのリーダーの故いかりや長介さんのことです。
いかりやさんは戦時中、富士市に疎開していて10年近く滞在。
その間バンドを結成し、富士市のダンスホールで演奏したりして、ミュージシャンとしての礎を築きました。
2004年に亡くなった際、その功績を称え富士市は市民感謝状を受賞。
その記念としてこの小路が完成しました。
岳南電車 本吉原駅
続いては本吉原駅。
現在の吉原駅まで路線が延長するまで、この駅が吉原駅でした。
駅前には岳南電車の本社があり、夜にはライトアップされてイルミネーションのような幻想的な風景を見れます。
本吉原駅の見所は、こちらのホーム上の屋根です。
岳南電車のホームの屋根は、大体このような造りなのですが、ここは後ろの工場群と合わせて芸術的に評価され、2021年に登録有形文化財に指定されました。
開業からほぼ変わらない姿で、懐かしい昭和の駅を堪能できます。
この駅には必ず下車し、写真撮影することを皆さんにおすすめしたいです。
岳南電車 岳南原田駅
工場群を抜けて、次に止まる駅は岳南原田駅です。
プラットホームは本吉原とほぼ変わらない姿ですが、屋根は少し綺麗な感じでした。
岳南原田駅の名物は、駅に併設しているそばうどんのめん太郎というお店です。
リーズナブルな価格でそばとうどんを食べることができるので、観光客や地元の人に大人気のこちらの蕎麦屋。
メニューはかけそば、かけうどんの2種類。
普通盛りで350円とリーズナブルですが、トッピングの数も豊富です。
こちらの店は、蕎麦とうどんを注文してトッピングを足していくというスタイルでした。
僕は今回、大盛りのうどんにササミ天をトッピングしました。
これで530円ですからかなり安いと言えるでしょう。
味も出汁が天ぷらによく染みて、とても美味しかったです。
お昼時はひっきりなしにお客さんが来ていたので、かなりの人気店と見ました。
基本はカウンターで食べますが、駅舎内で食べることもできます。
駅の中で食べるうどんそばも、中々良いものです。
お腹を満たしたら、駅から徒歩10分の原田公園に足を運びましょう。
ここは富士山が見える隠れスポットとして有名な公園です。
公園の多目的広場からは、綺麗な富士山が見えます。
が、残念ながらこの日は雲がかかって頂上を見ることができませんでした。
その原田公園から10分ほど東に歩けば、鎧ヶ淵親水池公園に到着します。
公園内を流れる川は、富士山の雪解け水の影響からか透き通った美しい水で、その美しさに心が洗われるようでした。
このような水車小屋も公園内にありました。
自然溢れる住宅街の中の公園なので、静かな環境でのんびりと散歩ができます。
岳南電車 比奈駅
広大な日本製紙富士工場の横をすり抜け、続いての停車駅は比奈駅です。
駅周辺には、製紙工場がたくさん点在していて、ホームの横の駐車場スペースにはかつて日本製紙の工場へ物資を運ぶ貨物列車の専用路線がありました。
そのため、貨物営業時は中心駅として機能してましたが、貨物廃止後はその役目を終え普通の無人駅となったのです。
駅舎には、模型がずらりと並んでいるフジ・ドリームスタジオ501という模型店があります。
駅の事務所を改装した店舗には、鉄道ジオラマやかつて岳南電車で使用していた切符の自動販売機など、鉄道マニアの心を揺さぶる模型が目白押しです。
ただ、こちらのお店は営業時間がまちまちなところが難点で、残念ながらこの日は店長が外出して閉店になっていました。
詳しい営業時間はお店のHPにあるので、そこを見てから出かけましょう。
駅から徒歩10分のところには、竹取公園という公園があります。
この公園は竹取という名の通り、かぐや姫でおなじみ竹取物語の舞台になったと言われている公園です。
富士市の見解では、どうやらかぐや姫は最後に月に帰ったのではなく、富士山に帰ったと言い伝えられています。
この結末に関しては諸説様々な見解があるそうなんですが、富士市はそう捉えているそうです。
園内は遊歩道があって、多くの竹が生えてましたが、正直普通の自然公園といった感じでした。
静かな公園なので、散策にはベストではないでしょうか。
岳南電車 岳南富士岡駅
次の駅は、岳南富士岡駅です。
ここには、岳南電車の車両基地があります。
その車両基地のところに、2021年にがくてつ機関車ひろばが完成しました。
ここでは、かつて貨物を取り扱っていた時代に活躍していた電気機関車4台と、旅客用に使用されている車両を無料で鑑賞できます。
このようなウッドデッキも完備され、のんびり機関車を見学できます。
左の機関車がED403、右の機関車がED402です。
ED403はかつて大昭和製紙(現日本製紙)の専用機関車として長年活躍し、ED402はかつて長野のアルピコ交通でダム建設の資材を輸送する機関車として活躍したのちに岳南電車に移籍。
両方とも長年岳南電車の貨物輸送を支えた功労者です。
側面には、「DAISHOWA」の文字が誇らしげに記されています。
他にも旅客用の7000系電車だったり、
かつて井の頭線を走っていた8000系も車庫に留置されていました。
車両は夜の21時までライトアップされるので、時間があれば夜の広場に行くのもおすすめです。
後、駅の横にある踏切は昔ながらの電鈴式の踏切です。
今ではほとんど聞けることのない貴重な音なので、聞き逃すことのないようにしましょう。
岳南電車 須津(すど)駅
ここから2駅は、簡単な解説でいきます。
こちらは、須津駅。
駅の近くには須津川が流れていて、その上流には紅葉の美しい須津川渓谷があります。
さらに奥には、大棚(おおだな)の滝という美しい滝もありますが、駅からかなりの距離があるので徒歩では少し厳しいです。
岳南電車 神谷駅
次の神谷駅はホームが1本の駅です。
駅前には特に見所は無いですが、東名沿いまで歩くと浅間古墳という県内でも最大級の前方後円墳があるとのこと。
岳南電車 岳南江尾駅
最後に紹介するのは、終点の岳南江尾駅です。
駅の周辺は、スーパーマーケットと畑があるだけで、特にこれといった見所はありません。
しかし、島式ホームに古ぼけた屋根が何ともいえない哀愁を漂わせています。
すぐ近くには新幹線の高架もあって、岳南電車と新幹線を同時に撮影することもできます。
ホームには綺麗な花畑がありました。
地元の江尾花の会という団体によって育てられていて、花と一緒に電車を写すことができる撮影スポットとしておすすめです。
平日の昼間と言うこともあってか、駅を利用する地元客はほとんどいませんでした。
僕を含め、観光客が数人でただ駅を見学にきただけという目的で来たようです。
そのまま折り返しの電車に乗って、吉原方面へ戻りました。
あまり地元の人は利用しないのでしょうか?
駅の中は自由に散策できるので、電車が出発するまでの暇をつぶすには最適でした。
静かな環境で、のんびりと過ごせるのも岳南鉄道の良さです。
まとめ
かなり長くなりましたが、今回は岳南電車の魅力と全10駅の沿線の見所などを一気に紹介してきました。
岳南電車は全ての駅から富士山が見え、駅ごとに様々な魅力があり、JRとは違うのんびりとした雰囲気を味わうことができるローカル私鉄です。
1日乗車券もありますので、週末にのんびりと出かけてみてください。
綺麗な自然や製紙工場の景色に、圧倒されること間違い無しです。
最後まで読んでいただきありがとうございました。